捨てた思いを拾う。
混み合った電車の中。電車の動きとともにゆらゆらと揺れて立つ。
決して、電車の中は満員ではないけど、そこまで自由に動けるわけでもなくて、人と人とが軽く触れ合いそうな距離感がある。
そんな日常のある瞬間に、自然な落ち着きを感じる時がある。
日々、生きていると自分の誰かを純粋に思う気持ちを捨てなきゃいけない場面は沢山あって、自分のハートと距離を取らざるを得なくなることがある。
満員に近い電車というものも、何も知らない誰かとの間で絶妙な心の距離感を持たなきゃいけない代表的な場面になる。
満員電車の中に、周りを気遣う優しさや温かさのようなものはあっても、誰かを大切に思い、愛し抜くような爆発的な思いはない。
でも、そんな爆発的な思いがないとわかっているからこそ、人の自然な優しさや気遣いは、僕の心に落ち着きをもたらしてくれる。
誰がどうかも知らない、満員電車の中で、隣の人を気遣う心を見せられた時、僕の心は優しさや落ち着きでもたらされる。
静かに優しく、誰かを大切に思おうとする気持ちは美しく、幸せな気持ちで満たされる。
満員電車のような、静かな気遣いが流れ行く場では、誰かを大切に思う爆発的な気持ちは捨てなきゃいけないかもだけど、でも、捨てたからこそ、人の優しい柔らかな気遣いが、より色濃く繊細に僕のハートに残る。
僕の日常の中での好きな瞬間。やっぱり、人は優しい、暖かいと思う瞬間。
もっともっと世界が優しさで満たされますように、満員電車の人場面から、静かにそう思う。